研究課題/領域番号 |
15KT0152
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
池ノ内 順一 九州大学, 理学研究院, 教授 (10500051)
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研究期間 (年度) |
2015-07-10 – 2018-03-31
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キーワード | 細胞・組織 / 細胞膜 / リポソーム / 脂質 |
研究実績の概要 |
本研究提案では、生物の持つシステムを構成的に解析し、仮説を検証できる新たな実験系として「生細胞とジャイアントリポソームの簡便な融合法の確立」を提案し、この手法を駆使して、「細胞膜のIdentityの構成的理解」を目指す。細胞とリポソームの融合は、単純に細胞とリポソームを混ぜただけでは起こらない。そこで、本研究提案では電気穿孔法による細胞とジャイアントリポソーム(GUV)の融合を用いる。電気穿孔法は、細胞に電気パルスを与えることで細胞膜に微小な穴をあけてDNAなどを取り込む方法として広く活用されているが、細胞同士を密にコンタクトさせた状態で電気パルスを与えると、細胞膜の穴同士がつながり、高効率に細胞融合を起こしてしまうこと(Electrofusion)が知られている。その点を逆に利用し、電気パルスによって細胞とGUVの融合を起こし、「特定の脂質を含む直径の小さなリポソーム」や「タンパク質の複合体」を内包させたGUVと細胞を融合させることにより、細胞内部にこれらを直接導入することが可能になる。本研究提案では、この細胞内へのリポソームやタンパク質複合体を直接導入する技術を確立することによって、これまでの細胞生物学の解析手法では明らかにできていない、「細胞膜のIdentityがどのようにして決まるのか」という問題を、構成的な解析手法に明らかにすることを目的としている。まずGUVに蛍光色素標識した脂質を含む小さなリポソーム(SUV)を封入したものを作成し、細胞内への導入を試みたが、細胞内でのSUVの蛍光輝度が十分ではなく、その挙動を観察できなかった。そこで、内部空間に量子ドットを封入したGUVを用いて、細胞とGUVの融合、量子ドットの細胞内への導入効率を向上させる条件の検討や導入後の蛍光観察に適した実験系の確立を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画通り、GUVと細胞膜の融合を観察することができた。
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今後の研究の推進方策 |
GUVに内包した蛍光脂質やタンパク質を細胞内に導入した後、その動態を継時的に追跡するために、細胞側に様々なプローブを発現させる必要がある。今年度はそのような観察に必要となる細胞株の樹立を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、GUVと細胞の融合に関する本研究課題の主たる研究成果を遂行するため、来年度分の経費を前倒しして活用した。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度は、既に確立された樹立した方法および細胞を用いた観察が主となる計画となる。
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備考 |
研究代表者の研究室における研究内容や成果報告に関するホームページ
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