研究課題/領域番号 |
15KT0154
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研究機関 | 基礎生物学研究所 |
研究代表者 |
鈴木 誠 基礎生物学研究所, 形態形成研究部門, 助教 (10533193)
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研究期間 (年度) |
2015-07-10 – 2018-03-31
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キーワード | 頂端収縮 / 光操作 / ツメガエル / 細胞外ATP |
研究実績の概要 |
細胞内Ca2+動態を制御することで細胞形態を人為的に制御する方法の確立を試みた。UV光にて活性化されるケージド化合物を顕微注入によりツメガエル胚に導入し、神経板が形成される発生段階でレーザーを任意の領域に照射した上で、照射細胞並びに周辺細胞を含む組織レベルでの反応を解析することによりUV光照射と細胞形態変化の間の関係性を解析した。その結果、Caged-IP3への光照射により一過的な細胞内Ca2+動態の変化が細胞自律的に形成されること、それが照射後50秒で1-2%の頂端収縮を引き起こすことが明らかになった。更に細胞内Ca2+動態を細胞外から制御することを目的として、Caged-ATPをツメガエル胚の培養液に添加して光照射実験を行い、細胞内Ca2+動態に変化を与え細胞・組織の応答を解析した。その結果、Caged-ATPへの光照射により一過的な細胞内Ca2+動態の変化が広範に形成されること、それが照射後50秒で10%程度の頂端収縮を引き起こすことが明らかになった。以上より細胞形態の人為的制御にはCaged-ATPが簡便で有効な手段だと考えられた。 またCaged-ATPを活用した細胞形態変化の分子基盤の解明を試みた。種々の蛍光プローブの動態を解析した結果、細胞内Ca2+動態変化後に頂端面におけるF-アクチンの動態が変化していること、それが頂端収縮に先立って起こることが明らかになった。更にCa2+誘導性の頂端収縮で機能する分子を探索した結果、N-カドヘリンの関与が明らかになった。以上の結果よりCa2+が頂端面におけるF-アクチンの動態変化を誘導し、それが細胞周縁部に局在するN-カドヘリンとの機能的相互作用を介して頂端収縮に転換することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画していた細胞形態の人為的制御の方法をケージド化合物を用いることで確立し、それを用いてCa2+誘導性の頂端収縮で機能する分子について候補を得ることが出来た。一方でケージド化合物以外の人為的制御法の検討は充分に済んでおらず、関連して候補分子の機能検証について若干の遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
近年報告が増えつつある光活性化型RhoファミリーGタンパク質、Ca2+動態制御分子の機能を検証し、光による細胞形態の制御法の選択肢を増加させる。また、光照射に対する上皮細胞の形態変化を高精細に抽出する画像解析法を開発し、光照射領域と組織変形領域の時間的空間的な関連性について効率よく評価する手法を構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
先に述べた光活性化型タンパク質の機能評価が遅れたために、それに必要な試薬をはじめとする消耗品の購入に遅れが生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
策定した推進方策に沿い一部の研究計画の実施を効率的に行い、その過程で必要となる消耗品の購入に充てる。
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