研究課題/領域番号 |
15KT0155
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研究機関 | 国立研究開発法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
古田 健也 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所フロンティア創造総合研究室, 主任研究員 (40571831)
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研究期間 (年度) |
2015-07-10 – 2018-03-31
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キーワード | モータータンパク質 / 微小管 / kinesin-5 / 両方向性モーター |
研究実績の概要 |
前年度の「今後の研究の推進方策」に述べたように,研究実施計画のうち,マクロな階層に関して,他の複数の研究グループが同様の趣旨の実験を行っているとの情報を得たため,さらにその先を行くため研究計画を一部変更し,分子数に応じて方向性を逆転させる両方向性の kinesin-5 の一種にフォーカスを絞り,当初の計画の通り,DNA scaffold による多分子化と,光ピンセットによる力学測定を進めることとした.本年度は,両方向性のkinesin-5 の発現系の確立と,DNA scaffold を用いて分子数を規定した上で複数分子を配置する技術の確立に取り組んだ.両方向性の kinesin-5 は,大腸菌,哺乳類培養細胞,昆虫細胞発現系のどれを使っても発現が悪く,DNA scaffold による分子の配置を行うにはタンパク質の量が足りなかった.そこで,可溶化タグとしてGFPをC末端に挿入したところ大幅な改善が観られ,DNA scaffold に対して大過剰量の kinesin-5 を反応させることに依って,4分子までの複数分子の連結が可能になった.その結果,1分子の運動方向と比較して,4分子では運動方向が逆転するものが現れた.先行研究では運動方向の逆転は多数の分子が相互作用することによって引き起こされると考えられており,数分子のレンジで運動方向が逆転することは全く想定されていなかったため,新しいモデルに繋がる知見が得られたと考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験計画の一部変更があったものの,想定されていた発現系の問題が解決できたこと,DNA scaffold を用いた実験で予想外の興味深い現象が観察できたことを考えると,全体としては順調に推移していると評価できる.
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今後の研究の推進方策 |
研究材料として両方向性の kinesin-5 に絞ったことで,多少の実験の詳細の変更はあるものの,全体としては,当初の研究実施計画の趣旨である「一分子と多分子の間のルールを知る」,というポイントは変更せずに研究を進める予定である.特に,光ピンセットを用いてミクロとマクロの中間の階層についての知見を得る,という目標は,最終年度に向けて大きな課題として取り組んでいきたいと考えている.すでに DNA scaffold を用いた運動観察で結果が出ており,この DNA scaffold に光ピンセット用のプローブを結合させれば力学測定は可能であることから,この計画の実現性は高いと考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画の若干の変更に伴い,次年度の消耗品が多く掛かることが予想されたため.
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次年度使用額の使用計画 |
細胞培養のための培養液あるいは,タンパク質精製用試薬に充てる予定である.
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