研究課題/領域番号 |
16002001
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松沢 哲郎 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (60111986)
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研究分担者 |
友永 雅己 京都大学, 霊長類研究所, 助教授 (70237139)
田中 正之 京都大学, 霊長類研究所, 助教 (80280775)
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キーワード | チンパンジー / 認知発達 / 親子関係 / 社会的参照 / 数列記憶 / 表情認知 / 相互利他行動 / 道具使用 |
研究概要 |
チンパンジーの認知発達について、比較認知科学の視点からの研究をおこなった。主要な対象となったのは京都大学霊長類研究所に暮らす1群14個体(5歳から40歳の3世代)である。祖父母・父母・子どもたちや仲間とともに、高さ15mのタワーや樹木の整備された環境で暮らしている。彼らの自発的な意思によって、各検査課題のおこなわれる勉強部屋までやってくる。1)「個体場面」つまり各自がブースでおこなうコンピュータ課題、2)人間の検査者が対面する「対面検査場面」、3)複数のチンパンジーが同居する「社会的場面」、4)屋外運動場ですごす「自由場面」という4つの場面で認知機能を調べた。チンパンジーの母子の絆は深く約5歳まで授乳をしていたが、6歳後半でようやく止まった。そうした絆をもとに、親が社会的学習の基盤であり学習の機会そのものを用.意している。また子どもの側には親や仲間の行動をまねるという本来的な動機付けが認められた。しかし、社会的参照、視線の理解、相互のみつめあい、微笑のやりとりなどは、チンパンジーではその萌芽はあるがきわめて乏しいことが実証された。こうした表情と声としぐさによる対面コミュニケーションは、人問を特徴付ける社会的コミュニケーションだといえる。18年度の具体的な研究の成果としては、個別学習における数列記憶においてチンパンジーの子どもがおとなや人間よりも優れていることを示した。また陰影処理、運動知覚、視線や表情の理解、物の操作と因果理解、描画の発達などについて実験研究を進めた。さらには、相互利他性の形成や、場所をめぐる争いなど、親子やなかまのあいだでみられる社会的知性を実験的に検証した。さらにアフリカ・ギニアの野生チンパンジーを対象に、石器使用などの道具使用や、文化の伝播の実態、人間とチンパンジーの共生のようすを解明した。またヒトの子どもやテナガザルやマカクザルで比較認知科学的な対照研究をおこなった。なお、研究成果をまとめ、Animal Cognition, Developmental Scienceなど学術誌で論文を公表した。
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