研究概要 |
昨年度に引き続き、緻密骨上に配列する骨芽細胞と造血幹細胞の接着装置・相互作用を分子レベルで詳細に検討し、幹細胞のホーミング、ロッジメントの機構を明らかにすることを目的として、幹細胞の分裂制御機構を検討した。 1)骨芽細胞に発現するAngiopoietin-1(Ang-1)が、TIE2受容体を介して静止期造血幹細胞に作用して、ニッチへの接着を制御していることを明らかにした(Cell,2004)。平成18年度は、造血幹細胞において、Ang-1刺激後誘導される背着分子N-カドヘリンが、幹細胞の骨芽細胞ニッチへの生着、および幹細胞の静止期維持にて重要な働きをすることを見出した。また、下流のβ-カテニンの核内移行が、幹細胞の増殖に関与することを明らかにした。 2)静止期幹細胞に特徴的な遺伝子発現をマイクロアレイを用いて検討し、mpl(トロンボポエチン受容体)が高く発現されることを認めた。mplに関しては、中和抗体などを用いて解析を進め、幹細胞/ニッチの相互作用に、mpl/トロンボポエチンが重要な働きをすることを明らかにした。また、幹細胞において、TIE2,c-Kit受容体のシグナル伝達との異同を明らかにした。幹細胞維持に必要な共通分子としてCDK inhibitor, p57が注目された。 3)ATM欠失マウスや連続骨髄移植の実験系を用いて、静止期幹細胞が枯渇する分子機構を解析している。現在までに、活性酸素(ROS), p38MAPKを介して、静止期幹細胞が減少することを明らかにしている(Nature Med,2006)。平成18年度は、FOXO3a KOマウスにおいても、ROSの上昇のため、p21,p57などが低下し、幹細胞が細胞回転をして、加齢に伴い幹細胞の枯渇が見られることを明らかにした(Cell Stem Cell,2007)。 4)さらに、がん幹細胞のニッチ制御に関しても、ヒト骨髄腫細胞株を免疫不全マウスに移植するという実験系で検討を開始した。
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