研究概要 |
昨年度に引き続き、造血幹細胞とニッチ細胞の相互作用を解析し、幹細胞の分裂制御機構の解明を目ざした。 1.細胞増殖因子と考えられているトロンボポエチン(TPO)受容体であるMplが、細胞分裂をしていない幹細胞で高く発現していることは意外であった(Cell Stem Cell, 2007)。さらに、Mpl陽性細胞は、陰性細胞に比し、自己複製能が高いことを移植実験により見いだし、Mpl,Tie2という2つの静止期幹細胞の指標を得た。それぞれのシグナルを解版することにより、細胞周期調節因子であるp57が幹細胞の静止期化に相関すると考えられた。幹細胞においてp57に結合する分子の同定を行っている。 2.FOXO3a欠失マウスにおいて、c-Kit陽性Sca-1陽性Lineage陰性(KSL)細胞集団中のCD34陰性細胞が消失すること、さらに、抗酸化剤の投与により幹細胞の機能回復が一部見られることを見出した(Cell Stem Cell, 2007)。 3.造血幹細胞のニッチへの出入りに、酸化ストレスが関与するか否かを明らかにしたBSOなどの酸化剤により、p38MAPKが活性化し、N-cadherinが低下し、幹細胞はニッチから離れると考えられた(BBRC,2007)。 4.ユビキチンリガーゼ、FBW7欠損マウスにおいて、静止期幹細胞が消失し、Tcell型リンパ性白血病が発症することを見出した。この機序として、幹細胞におけるc-Myc, Notchタンパクの集積があがることが考えられた(Genes and Dev, 2008)。
|