2光子励起顕微鏡を用いて、中枢シナプスおよび開口放出現象の解析を進めた。中枢シナプスにおいては、スパイン頭部が長期増強に伴って数秒で拡大する現象を見つけ報告した。また、長らく問題だったスパインネック形態の機能的意義を、2光子励起グルタミン酸法を用いて明らかにする実験を進めた結果、ネック形態がNMDA受容体依存的なカルシウムの動態を決める重要な因子であることを突き止めた。細いスパインはネックのカルシウム透過性が低いために、そのスパイン頭部に限局した大きなカルシウム上昇が起き、これにより孤立したスパイン頭部増大が起きると考えられた(印刷中)。スパイン形態に着目した脳研究を更に進めるために、新しい2光子励起顕微鏡の構築を進め、動物個体におけるスパイン動態の研究に着手した。 我々の開発した2光子励起法と水溶性色素を用いた開口放出測定法(TEPイメージングと命名)を用いて、開口放出に伴うSNARE分子(SNAP-25)の動態を捉えることに初めて成功した。また、外分泌標本において開口放出に伴い、分泌小胞のアクチンによる被覆が速やかに起きること、この機構が破壊されると小胞が膨潤して小胞内で酵素が活性化し、急性膵炎様の細胞形態を示すことを明らかにした。この方法を応用して、小胞の直径をナノメータ精度で計る方法論(TEPIQ解析)を開発し、シナプス小胞開口放出測定に向けて技術開発を進めているところである。
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