(1) F_1-ATPaseの回転機構 昨年、回転分子モーターF_1-ATPase(F_1)の回転軸であるγサブユニットの、固定子(α_3β_3サブユニットよりなる筒)に突き刺った部分を遺伝子的に全部削り取っても、遅いながら回転を続ける(ただし回転力は小さい)という驚くべき結果を報告した。この突き刺さった部分は、γのC末とN末のαヘリクスがコイルドコイルを形成している。今回、N末ヘリクスを残してC末のαヘリクスを端から削っていったところ、根本まで削り取っても回転力は半分程度残ることが分かった。N末ヘリクスは短いので、回転軸の根本部分だけで半分の回転力が出せることになる。一方、C末を固定子のβサブユニットにつないでおくと、今度はN末ヘリクスをどんどん削れるが、回転軸の根本部分を超えてさらに外側まで削ってしまっても、高速回転することが分かった。これらの結果は、F_1が、本来の回転子だけでなく固定子の筒に入るものなら何でも回すことができるのではないか、という可能性を示唆する。 (2) トポイソメラーゼの働きの可視化 光ピンセットを使って2本のDNAを絡ませた上でII型トポイソメラーゼを作用させると、絡まりがさっと解けていく。DNAを蛍光染色することにより、この全過程をビデオ画像として記録できた。また、トポイソメラーゼの一つであるreverse gyraseが、DNAの2本鎖を(positive supercoilを作る方向に)どんどん絡めていくところを可視化することにも成功した。 (3) ミオシンの足首の運動 片脚のみにしたミオシンVの脚部をビーズに固定し、足裏部分に別のビーズを付け、caged ATPを用いて瞬間的にATPを与えたところ、ATP結合後に足首の角度が90度近く変化し、数十秒後に元に戻ることが分かった。我々の提唱しているミオシンの爪先上下機構とよく合う結果である。
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