研究課題/領域番号 |
16002014
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研究機関 | (財)大阪バイオサイエンス研究所 |
研究代表者 |
花房 秀三郎 (財)大阪バイオサイエンス研究所, 分子腫瘍学部門, 研究員 (50312228)
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研究分担者 |
赤城 剛 (財)大阪バイオサイエンス研究所, 分子腫瘍学部門, 研究員 (90184077)
岩原 寿典 (財)大阪バイオサイエンス研究所, 分子腫瘍学部門, 研究員 (80332229)
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キーワード | Crk / p130Cas / FAK / Integrin / Anchorage / RNAi / Ras / Telomerase |
研究概要 |
1.Crk過剰発現による足場依存性増殖誘導シグナルの活性化メカニズムの解析及び、正常細胞のシグナル伝達におけるc-Crkの機能解析 c-Crkによるインテグリンシグナルの制御機構の解明をさらに進め、以下の知見が得られた。 (1)c-Crkのlocalization fibronectinへの接着でインテグリンを刺激したNIH3T3細胞のc-Crk、p130Cas、FAKのlocalizationをそれぞれの抗体を用いた2重染色により観察した。その結果p130CasとFAKのco-localizationが顕著に観察されるleading-edgeや、lamellipodia-formationをとる領域において、c-Crkの顕著な染色が観察され、c-Crkとp130Cas、FAKとのco-localizationも観察された。これらの結果からインテグリンーFAKシグナルが活発に活性化されている部位において、c-Crk-p130Cas-FAKがcomplexを形成していることが示唆された。 (2)Crk-knockdown細胞におけるp130Casのリン酸化、動態の変化 RNAiによるCrk knockdown細胞をインテグリン刺激したところ、p130Casのリン酸化およびFAKとの結合が顕著に低下していた。さらに、コントロール細胞ではfibronectinへの接着に応じて、p130Casの斑点様の染色像が観察されるが、Crk-knockdown細胞ではこうした鮮明な斑点様の染色像が観察されない事も分かった。以上の結果から、c-Crkはインテグリン刺激に応じたp130Casのlocalization変化を制御していることが示唆された。 2.癌遺伝子による足場非依存性増殖誘導の動物種間による違いの解析 ヒト繊維芽細胞が示すRasによる足場非依存性増殖誘導に対する抵抗性のメカニズムをラット繊維芽細胞との比較によって解析し、以下のことを明らかにした。 (1)ラットの細胞ではRasによってアクチン細胞骨格系の崩壊による強い形態変化が観察されたのに対して、ヒトの細胞はこれらの変化に対して非常に強い抵抗性を示す (2)ラットの細胞では、活性型RasによってFra1の発現が強く誘導されるのに対して、ヒトの細胞では、わずかな発現誘導しか起こらなかった。さらに、Fra-1を強制発現させることによって、ヒトの細胞でも足場非依存性増殖が誘導されることが示され、この転写因子の発現抑制がヒト細胞が示す活性化型Rasによる癌化に対する抵抗性の原因の一つである事が分かった。
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