交付申請書に記載の研究実施計画に沿って研究を遂行し、下記の成果を得た。 概日時計のリセットに関するタンパク質レベルからのアプローチとして、概日時計の前進時にニワトリの松果体において特異的に誘導される遺伝子を同定しA78と命名した。この遺伝子は、コイルドコイル構造を有しており、他のタンパク質と相互作用して機能を発揮する可能性が考えられた。そこでまず、このタンパク質の細胞内局在を調べた結果、中心体に局在していることがわかった。現在、中心体におけるA78の機能と中心体が概日時計発振(あるいは同調)に果たす役割を探るべく、中心体に局在するタンパク質とA78の相互作用を調べている。これと並行して、個体レベルからのリセットメカニズムの解明にむけて、これまでに作製したトランスジェニックゼブラフィッシュ(Tg)の遊泳行動解析を行った。その結果、このTgでは、個体内のメラトニンリズムが消失しているものの、かなりの割合の個体が遊泳行動のリズムを示すことが判明した。このことから、行動リズムを支配する中枢がメラトニンリズムの完全な支配下にあるわけではなく、体内のメラトニンリズムが消失しても、独自に発振できることが示唆された。一方、新たな入力分子の解析による時計同調の遺伝子プログラム解読を目指し、時計遺伝子Bmal1およびCry1のプロモータを単離した。現在、これらプロモータに光情報、グルコース刺激情報、あるいは時刻情報が入力している可能性を探っている。
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