研究概要 |
RNAi (RNA interference)とは真核生物の細胞に2本鎖RNAを導入した場合に相同配列を持つ遺伝子の発現抑制が生じる現象であり、線虫C. elegansにおける実験系で最初に発見された。ゲノム情報の発現制御の新しい手法として、基礎研究のみならず将来の医療や植物育種等へのRNAiの応用が期待されている。 我々の研究グループは線虫をモデル生物として用い、遺伝学と生化学の両方を組み合わせた手法でRNAiの分子機構について解析を行った。まず、RNAiに関与する遺伝子群を徹底的に同定することを目的として、RNAi活性を欠損した線虫変異体の大規模なスクリーニングを行い、51系統の変異体(fj1〜fj51)を新たに単離した。そのスクリーニングにおいては、高頻度に出現する傾向のあるV番染色体由来の既知変異を避けて実験を進めることができるように我々のグループ独自の工夫を織り込んだ。引き続いた解析の結果、新しく単離したfji4,fji45変異は未知のRNAi関与遺伝子を反映している可能性が高いと判断するにいたっており、原因遺伝子のクローニングに向けて詳細なマッピングを進めているところである。ところで、既知のRNAi因子の中では、筆者が以前に発見したRDE-1がRNAi現象の鍵であると考えている。RDE-1がどのような因子と相互作用して機能しているのか明らかにするために、エピトープタグを付加したRDE-1蛋白を線虫体内で発現させ、タグに対するアフィニティー樹脂を用いてRDE-1複合体の精製を行った。その結果、RDE-1が複数のRNAi関与因子と相互作用していることが判明した。
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