本研究は、複数の疾患感受性遺伝子の遺伝子多型から、喘息発症のリスクをどの程度まで推定できるのかを明らかにすることを目的とする。これまで、喘息感受性候補遺伝子として80遺伝子、320以上の一塩基多型をスクリーニングし、複数の遺伝子が疾患との相関を示すことを見出してきたが、それら複数の感受性遺伝子からのロジェスティック回帰による疾患発症予測がどの程度可能か、Area Under ROC curve (AUC)を中心に用い評価した。また、本年度には、各遺伝子のハプロタイプまたは、多アレルマーカーの喘息発症リスクへの相互作用をスクリーニングするプログラムを開発し、これまでSNP単位でしか相互作用の項を検討できなかった限界を改善した。 小児喘息の発症に関しては、捕体C3、β2アドレナリン受容体、IL-4受容体α、ロイコトリエン受容体CysLT2などの11の遺伝子多型を組み合わせると、AUC値は0.861、NagelkerkeのR2乗は0.491であった。これら遺伝子に、2組の遺伝子間の相互作用を加えると、AUCとR2乗の値はそれぞれ、8.87、0.549となった。得られたAUCの値は、小児喘息とコントロールを、肺機能検査や一酸化窒素排出量によって識別を試みた研究(Malmberg LP (2003) Thorax58:494-499)で得られた、肺機能検査のAUC値(0.76〜0.77)よりは良好で、一酸化窒素排出量による値(0.91)よりやや劣っていた。 今回の結果は、遺伝子多型からの疾患の有無の診断において、一般的な臨床検査と同程度の成績が期待出来る事を示している。
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