3'側非翻訳領域やイントロン領域に遺伝子変異があり、通常の遺伝病の概念では説明できない筋強直性ジストロフィー(DM)の発症機構を解明することが当申請における課題である。遺伝子変異はCTGトリプレット・リピートやCCTGクゥアドラプル・リピートの異常伸長で説明されるが、翻訳産物に変異が入らないにもかかわらず優性の形式で発症するため、ゲノム発現機構のレベルで発症の原因が潜んでいる可能性がある。また症状が全身に渡っており、表現型としての症状には多岐にわたる遺伝子の異常が考えられる。 これまでに私は、DMモデル細胞を用いたマイクロアレイ解析を行っており、リピート伸長下で発現量の変化する遺伝子群の探索を行ってきた。当該年度における研究の結果、リピート伸長下で発現量の減少した遺伝子群の中には転写因子AP-1の認識配列を持つものが多いことが分かった。更にプロモーター活性を測定するルシフェラーゼアッセイを行い、マイクロアレイの結果を生化学的にフィードバックして検証を行ったところ、確かにAP-1の活性が減少していることが示された。同時にリピートRNAに結合するRNA結合タンパク質を用いたスプライシングアッセイを行い、これらRNA結合タンパク質の機能を明らかにした。今回の研究により、DM発症の第一義にはRNA結合タンパク質が関与しており、表現型としてAP-1の下流にある遺伝子の関与が示唆されることが明らかになった。
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