・肥満QTLとして検出されたNidd6のポジショナルキャンディデートであるPnlip遺伝子については、〜9.8kbの5'上流隣接領域、〜13.1kbのエクソン/イントロン領域および〜3.6kbの3'下流隣接領域をOLETFとF344でダイレクトシーケンスし、多型について解析した。その結果、転写開始点の上流〜3.4kbの位置に、F344アリルに比べOLETFアリルにおいてサイズが長いVNTR多型が検出された。そこで、Nidd6 QTLで、OLETFとは異なるアリルを有することがQTL解析により判明しており、Pnlip遺伝子発現レベルがOLETFに比べ減少しているBNとLETOについても、上記多型部分のシーケンス解析を行った。その結果、OLETFより短くF344と同じサイズであり、Pnlip遺伝子についての発現レベルの増加がOLETF特異的であることに加えて、当該遺伝子のVNTR多型はOLETFに特異的な多型を示すことが明らかになった。Ins1遺伝子では、プロモーター領域に同様なVNTR多型が存在し、それが骨格筋、脂肪組織および膵での発現レベルに影響を及ぼすことで糖尿病発症につながっているらしいとの報告がなされており、今回の発見は興味深いものである。また、NIDDM QTLとして検出されたNidd2のポジショナルキャンディデートであるPgc1遺伝子についても、発現レベルの増加がOLETFにおいて観察されることに加えて、イントロン領域に多くのSNP多型が存在していることが明らかにされた。 ・Nidd6および2のゲノム領域内で組み換えが生じている(コンジェニックxF344)xコンジェニックのバッククロス交雑群からの雄選抜個体12匹およびサブコンジェニック11系統を用いることで、Nidd6については、D1Rat90とD1Rat225の間の2.3cMの領域にQTLをファインマッピングした。さらに、Nidd2については、D1Rat1とD1Rat3の間の1.2cMの領域に存在することが明らかにされた。 ・上記、新規組み換えバックスロス交雑個体を用いることで、ファインマッピングされたNidd6 QTLがPnlip遺伝子のVNTR多型および発現レベルの変化と共分離していることが明らかにされた。また、Nidd2のファインマッピングされた領域にPgc1遺伝子が存在することが明らかにされた。 ・これらの結果より、PnlipおよびPgc1遺伝子がNidd6およびNidd2 QTLの原因遺伝子であるかもしれないという状況証拠が得られた。
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