研究概要 |
1)標識遺伝子群挿入系の構築 部位特異的組換え(Cre/loxP系)を利用した既存のBAC/PACの改変を行うためのプラスミドベクター(pNEL,pNELI,pNELγ,pNELγI)を作製し、これら改変用ベクターを、大腸菌内(in vivo)でBAC/PACへ挿入できる系を構築した。新規に温度感受性変異型ori、アラビノース発現誘導型Cre発現ユニットを持つプラスミドを作成し、大腸菌内での一過性Creタンパク発現を可能にした。この新規ベクターと上記改変用ベクターを、BACを保持している大腸菌へ形質導入し、アラビノース誘導、高温培養による新規ベクターの不活化を行うことによって効率よくBACへの標識遺伝子の挿入が行えることを確認した。改変効率は、約80〜90%であった。また、薬剤選択後のコロニー出現数は、BACインサートの長さに逆比例せず、300kb以上のBACにも有効であると考えられた。さらに、改変を行ったBACクローン(含HPRT遺伝子など)を線維肉腫細胞株(HT1080)へ導入し、安定な遺伝子発現が得られることを確認した。 これらベクター系は、イタリア、米国、英国、イスラエル、国内の計9施設へ供与を行った。 2)ヒト人工染色体形成能をもつBAC改変系の構築 ライブラリーよりヒトアルフォイド配列を持ち、セントロメア形成能をもつBAC/PACを単離した。このアルフォイドBAC/PACへ標識遺伝子群を組込み、さらに改変し、Cre/loxP系によりori部分が切り離され任意のBACへ挿入される系を構築した。改変は、1)で構築した大腸菌内組換え系を用いて行った。導入効率は、5〜20%と高効率ではないものの、任意のゲノム遺伝子を含むアルフォイドBACが得られた。このアルフォイド改変BACをHT1080へ導入し、ヒト人工染色体を形成できることを確認した。遺伝子発現は、アルフォイドDNAが短いと高くなる傾向が認められた。(投稿中)
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