放線菌Streptomyces griseusの二次代謝、形態分化は、低分子科学調節物質A-ファクターによりスイッチ・オンされる。ゲノム情報に基づき、これまで明らかにしてきたA-ファクター制御カスケードの精密化を行い、以下の結果を挙げた。 (1)S.griseusの全ゲノム配列決定がほぼ終了し、現在塩基配列に基づいた遺伝子のアノテーションを進行中である。ギャップがあと数ヶ所あるが、あと数ヶ月のうちに完全な塩基配列およびアノテーションを完了できる見通しである。この成果に基づき、DNAマイクロアレイ法を駆使して、A-ファクター制御カスケード内の各種転写因子の標的を同定していく予定である。 (2)A-ファクター制御カスケード内の重要な転写因子であるAdpAのDNA結合様式、二量体化ドメインの構造、結合コンセンサス配列を決定し、AdpAがAraC/Xy1Sファミリーのサブファミリーを構成することを提唱した。 (3)S.griseus、S.coelicolor A3(2)のゲノム情報に基づいて、タイプIII型ポリケタイド合成酵素をコードすると考えられる遺伝子をクローニングし、タンパク質を大腸菌に発現させることによって、新規な反応を行うGesAを発見した。本酵素は、マロニル-CoAから胞子の出芽阻害剤ジャーミシジンを生成した。 (4)放線菌酵素を「人工生合成遺伝子クラスター」の一員として用いることにより、天然型の(2S)-フラバノンの大腸菌における発酵生産に成功した。また、マロニル-CoAのプール量を上げるため、コリネ菌のアセチル-CoAカルボキシラーゼ遺伝子を強制発現したところ、60mg/literのフラバノンを生産した。
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