本研究では、二次共生由来の生物であり、葉緑体の祖先真核藻の痕跡核であるヌクレオモルフ(Nm)を有するクロララクニオン藻について、Nmゲノムサイズの多様性を明らかにし、その進化傾向を推察することを目的とした。これまでNmゲノムサイズの調査がされていない主要系統群を代表する3株:BC52、CCMP2058(Lotharella amoebiformis)、CCMP2057(Gymnochlora stellata)を含む合計5株について、パルスフィールド電気泳動法を用いNm染色体を分離し、各Nm染色体に必ず存在する18SrDNAをプローブにサザンハイブリダイゼーションを行ない、各Nm染色体の数とサイズを推定した。その結果、5株のうち4株は、以前の報告と同様3本の直鎖状Nm染色体をもつことがわかった。残る1株(L.amoebiformis)は4本の染色体を持つ可能性が示唆された。Nm染色体の数は必ず3本であるとされており、もし4本の染色体が本当だとしたら、今後のNmゲノム進化の研究の発展において重要な知見となる。いずれにせよ本藻群全体のNmゲノムサイズは、約350〜405(あるいは455)kbの範囲となり、クロララクニオン藻内でゲノムサイズに多様性があることが再確認された。また核コード18SrDNAの分子系統樹をもとにNmゲノムサイズの進化を考えると、1)Nmゲノムは、本藻群の分岐以前に現存のサイズと同程度まで縮小し、その後非コード領域等でサイズの増減がおこった、2)Nmゲノムは、常に減少傾向にあり、全ての系統群で独立にサイズの減少がおこった、のどちらかである可能性が示唆された。 なお、本研究成果は、第15回国際進化原生生物学会大会(2005年1月、メルボルン・オーストラリア)および第29回日本藻類学会大会(2005年3月、京都)で口頭発表を行なった。
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