研究概要 |
タンパク質合成系に関与するとされる教科書的なタンパク質性因子をすべて純化し系を再構築したタンパク質合成系(PUREシステム)の翻訳効率がさほど良くないことから、タンパク質合成にはまだ知られていない遺伝子が存在するのではないかと考えた。タンパク質合成は生物にとって非常に重要なイベントであることから、この遺伝子はすべてのバクテリアに共通すると考え、BuchneraとM.genitalium G37に共通する遺伝子のうち機能が確定しない遺伝子数を見積もったところ、たかだか30しか存在しないことが明らかとなった。このうちタンパク質合成に関与しそうなgidA, efpの他、高度に保存されていたGTP結合タンパク質、mnmE、era、lepA、yihA、ychF、yhbZ、engAをクローニングし、遺伝子産物をすべてヒスチジンタグを融合させて調製した。これらをPUREシステムに添加したが、どのタンパク質を加えた場合でもタンパク質合成の顕著な促進も阻害も認められなかった。このことは、これらのタンパク質は少なくとも1つではタンパク質合成系に関与していないと考えられる。しかしこれらの多くが文献上、リボソームと作用することが指摘されていることから、このうち複数が協調的に作用している可能性も考えられる。そこで発現させたタンパク質をNiカラムに固定化し、これをアフィニティークロマトグラフィーに見立てて、相互作用するタンパク質を分離し質量分析にかけて分離されたタンパク質を同定した。もしもバクテリアにとって必須な機能を有しているなら、相互作用する相手分子もやはり保存性の高いタンパク質だと考えられる。しかし現在のところ、EF-Tu以外に保存性の高いタンパク質は認められなかった。EF-Tuは細胞中にたくさん含まれるため、非特異的な相互作用の可能性もあり、慎重に解析を進めている。
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