我々のグループにより分子同定されたJPは、これまでの筋細胞における研究成果から結合膜構造の形成に寄与することが明らかにされている。哺乳動物では4種のJPサブタイプ遺伝子が同定され、中枢ではJP-3とJP-4の共発現が明らかにされた以前作製したJP-3欠損マウスにおいて特に重篤な表現形が確認できなかったことは、JP-4による機能的補完作用を考慮する必要があると考えられた。平成16年度には、JP-4欠損マウスを作製し、掛け合わせによるJP-3とJP-4の同時欠損マウスの作製も併せて遂行した。JP-4欠損マウスには特に重篤な異常は現在のところ認められていない。JP-3とJP-4同時欠損マウスにおいては、離乳時期の致死性、下肢反射の異常、海馬神経細胞における結合膜構造の減少などが予備的観察から明らかになっている。この変異マウスの解析から、中枢におけるJPの機能実体に迫れるものと期待される。 また、サルカルメニン(SAR)は骨格筋と心筋細胞に特異的に発現し、小胞体内に分布しCa2+結合タンパク質として機能するものと考えられている。SAR欠損マウスを解析し、その生理機能を明らかにする試みも行った。SAR欠損骨格筋において、弛緩時間の延長、小胞体のCa2+取り込み活性の低下、Ca2+ポンプ量の低下が観察された。SAR欠損心筋においては、収縮と弛緩時間の延長、Ca2+トランジェントの低下が観察された。また、心電図、心エコー、心カテーテルによる実験において、SAR欠損マウスの心機能の低下が示された。これらは、SARが筋細胞の小胞体Ca2+貯蔵量を規定する因子であり、Ca2+ポンプの安定性にも寄与しており、個体レベルにおいては特に心臓機能の向上に寄与していることを示している。
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