アポEの脳内における機能及びアルツハイマー病発症における役割を解析する自的で、アポE/VLDLR/ApoER2を欠損するトリプルノックアウト(TKO)マウス及びLDLR/VLDLR/ApoER2を欠損するトリプルノックアウト2(TKO2)マウスを作製した。TKOマウスではDKOマウス(VLDLR/ApoER2)に比べ、明らかに海馬の層構造形成異常が更に亢進しており、ほぼ生後4週間以内に死亡する。一方、DKOマウスでは約20%が3ヶ月以上生存することを見いだした。これらマウスの直腸温の解析から、TKOマウスに見られる低生存率は著しい体温の低下によるものであることが明らかとなった。VLDLR(+/-)/ApoER2(-/-)では海馬CA1領域及びCA3領域のリボン部分の錐体細胞層が2層に分離しているが、アポEがさらに欠損することで錐体細胞層が1層に回復することから、アポEがCA1領域及びCA3領域のVLDLRに特異的に結合していることが示された。そこで、海馬ニューロンの初代培養系を用い、リポタンパク受容体を欠損したニューロンにおける血清β-VLDLの取り込みを解析した。VLDLR欠損ニューロンにおけるβ-VLDLの取り込みは、コントロールと比較して変化はなく、むしろLDLR欠損ニューロンで著しく減弱していた。 ヒト・アポE2、E3又はE4のcDNAを組み込んだアデノウイルスを作製し、アストロサイト初代培養系及びグリオーマ細胞系においてアポEの大量発現系を確立した。本培養上清中のアポEは脳内のものと同様に一部がシアル酸による修飾を受けていた。また、興味深いことに、肝臓で合成されるアポEとは異なり2つの分子種として分泌されることが明らかとなった。この培養上清から各アポEをヘパリン、イオン交換カラム、ゲル濾過カラムにより精製した。
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