研究概要 |
脳内におけるアルツハイマー病βアミロイド線維(fAβ)形成・沈着の過程には、fAβおよびAβ蛋白質(モノマー)間の線維形成反応以外にも、様々な生体分子が複雑な分子間相互作用を行い影響を及ぼしていると考えられる。われわれはこれまでに、Aβ蛋白質からのβアミロイド線維形成過程を説明する重合核依存性重合モデル、及び線維伸長過程を説明する一次反応速度論モデルを構築し、アポEなどの生体分子及び種々の抗酸化剤が線維形成に及ぼす影響の詳細な解析を続けている。本年度の実績;試験管内でAβ蛋白質からのfAβ形成を阻害し、かつ形成されたfAβを不安定化する有機化合物を引き続き探索した結果、ビタミンA誘導体、タンニン酸及びクルクミンが強力な線維形成阻害・不安定化作用(有効濃度(EC50)は、0.1〜10μM)を示すことを見出した(Ono, K. et al., Exp Neurol. 189(2):380-392,2004, Ono, K. et al., Biochim Biophys Acta. 1690(3):193-202,2004)。既に検討した一群のポリフェノール化合物(ワインポリフェノール群、カテキン等)との活性比較ならびに、構造機能相関解析を行った。その結果、タンニン酸、クルクミン、レチノール、N-ジヒドログアイアコール酸,ワインポリフェノール群の一部等の活性が高いことが判明した。また、ワインポリフェノール群の内では水酸基の多い分子の活性が高いこと、ビタミンA誘導体ではレチノール、レチナールの活性が高いことが判明した。さらに、これらの線維形成阻害・線維不安定化作用機構を解明するため、ミリセチン等を用いて質量分析法などにより解析を試みた。その結果、これらの薬剤は、非共有結合的な作用により線維を不安定化していることを示唆するデータが得られつつある。
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