研究概要 |
視床下核(Subthalamic nucleus, STN)は大脳基底核回路を構成する神経核であり、運動制御、認知、動機付けなどの脳機能に重要な役割を持つ。本ニューロンの活動の異常はパーキンソン病などの運動疾患の病態と関係する。STNの外科的破壊や高頻度刺激は、パーキンソン病の治療法のひとつとしても注目されている。本研究では、イムノトキシン細胞標的法を用いてSTNを誘導的に破壊し、黒質網様部(SNr)と淡蒼球(GP)の単一ユニット活動を記録することによって、これらの自発活動とドーパミン誘導性活動におけるSTNの役割を解析した。STNの破壊は、SNrの自発活動のパターンを変化させるとともに、その発火頻度の減少を誘導した。特に、活動パターンの変化は発火の規則性の比率を低下させ、バースト発火の比率を上昇させた。一方で、STN破壊はGPの自発発火活動のパターンや頻度には影響しなかった。また、STNの破壊は、ドーパミンに応答したSNr活動の低下を減弱するとともに、GP活動の増加を阻害した。ユニット記録の結果は、以前に、神経活動マーカーの解析から得られた運動機能を制御する選択的な神経回路の役割を支持した。これらのデータは、STNは基底核出力部への直接の経路を介して自発運動を抑制すること、また、ドーパミン刺激に応答したこの神経核の活動はGPを媒介する神経路を介して出力部に働き、運動行動を発現するために機能することが明らかとなった。以上の結果は、STNニューロンはドーパミン刺激の程度に依存し、選択的な神経路を介して大脳基底核機能を二重に制御するために重要な役割を担うことが明らかとなった。
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