研究概要 |
アルツハイマー病の脳組織では、病原性ペプチド(Aβ)の沈着が初期病変として観察される。βセクレターゼ(BACE1)は、アミロイド前駆体を切断し、Aβペプチド産生の引き金を引くプロテアーゼであるが、孤発性アルツハイマー病の患者ではBACE1活性が正常人の2倍以上に上昇している。すなわち、孤発性アルツハイマーではBACE1活性の上昇が起こり、これがAβの沈着、さらには発症の引き金を引くと考えられる。一方、申請者らはBACE1がアミロイド前駆体以外にもα2,6シアル酸転移酵素を切断することを見いだした。また、ヒト脳脊髄液中には比較的高濃度の可溶性α2,6シアル酸転移酵素(BACE1産物)が存在すること、アルツハイマー病患者ではこのレベルの上昇傾向があることを予備実験により確認した。この独自の発見に基づいて、アルツハイマー病患者におけるBACE1活性の上昇を脳脊髄液中の可溶性α2,6シアル酸転移酵素(BACE1産物)によってモニターし、早期に本疾患を診断するシステムの開発を目指した。 高感度のサンドイッチELISA法を開発した。診断の精度は、使用する抗体の質に大きく依存する。申請者は、BACE1によって切断されたシアル酸転移酵素の切断端に対する抗体(E41抗体)を作製した。E41抗体はBACE1による切断端に特異性が高く、5〜10μlの脳脊髄液中のシグナルをウエスタン・ブロット法で検出することができた。我々は、E41抗体に加えて、シアル酸転移酵素の触媒ドメイン(カルボキシル側のドメイン)に対する抗体も作製した。両抗体を用いてサンドイッチELISA法を開発した。
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