(1)タウオパチー脳に蓄積するタウの翻訳後修飾とプロテアーゼ耐性中心領域の解析 アルツハイマー病、ピック病、皮質基底核変性症、進行性核上性麻痺、FTDP-17などのタウオパチー剖検脳の蓄積タウをトリプシン処理してウエスタンブロット解析した結果、それぞれの疾患に特徴的なバンドパターンが検出された。それぞれのバンドをプロテインシーケンサー、MALDI-TOF/MSにより解析し、各種疾患に蓄積するタウ線維の中心領域を同定した。 (2)神経系細胞におけるタウの過剰発現と封入体形成の観察 マウス神経系培養細胞にヒトのタウを過剰発現することで、封入体様のタウの凝集体が形成されることを観察した。この封入体は抗ユビキチン抗体やタウのリン酸化酵素の一つであるGSK3の抗体にも陽性を示した。 (3)新規タウ遺伝子変異の変異効果 英国のFTDP-17患者に新規に発見されたタウ遺伝子の変異(Q336R)を導入した3リピート、4リピートタウを大腸菌に発現、精製し、微小管重合能を野生型と比較した。その結果、変異を導入したものの方が、野生型に比べてわずかに微小管結合能が高い傾向が示された。 (4)タウの線維化阻害剤の探索とその阻害機構の解析 Aβ、抗プリオン凝集阻害作用などが報告されている化合物を含む9系統40種類の化合物について、電子顕微鏡観察、チオフラビンSの蛍光、遠心によるサルコシル不溶性タウの検出の3種類のアッセイ法を用いてin vitroのタウの線維化抑制効果を検討した。その結果、3系統の化合物にタウの線維化抑制効果が観察され、興味深いことに抑制効果を示した化合物はβペプチドの凝集に対してもの強い阻害効果を示し、これらに共通の分子機構があることを強く示唆した。
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