研究概要 |
離散事象システムに基づく運動決定機構(情報処理系)と,ある目標運動パターンに基づく運動生成機構の2つのアプローチを「記号」-「制御則・運動パターン」といった具合に直接的に結合させることは容易であるが,この場合決まった運動の発現のみが可能であり,運動の動的な遷移や結合が困難となる.これは,本来時空間的に連続な運動空間から空間連続性を排除し,情報処理系である記号空間から時間概念を排除したことが大きな原因と考えられる.人間に似た,柔軟で適応力のある,意志決定機構(情報処理系)の設計には,連続空間としての特性を保持した設計法の確立が必要であろう.本研究では,これまでに提案してきた,力学的情報処理系に基づいたロボットの運動生成法を基礎として,連続系のまま記号空間と運動空間の結合を含めた同時設計を行うことを目的とし,以下の成果を得た. (1)多項式で表現された力学系の係数行列をある空間基底の線形和として表すことで,力学系を空間内の1点として表現することができる.空間内の1点が運動を定める力学系の表現になっていることから,これは連続的記号空間と見なせる. (2)量子化された空間を設定し,各ブロックに運動空間における力学系を記憶しているものとする.いくつかの運動を用意し,自己組織化マップ形成のアルゴリズムを適用することで,運動の類似性に依存したマップを完成させることができる.これは,シンボルを領域として表現した記号空間の設計法である. (3)アトラクタを有する力学系の状態変数の中に,離散事象システムの状態変数も加えた力学系の設計を行う.離散事象システムの状態変数は1か0の2値に変換することで,これは現在の事象を表す変数となる.特に,ここでは,これを運動遷移のためのパラメータとして記述することで,遷移可能な運動間の記述と遷移の状態を表現するものとする.
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