研究概要 |
本研究はウェアラブルコンピュータを用いて個人の主観的体験を記録することによって,人間の体験構造を視知覚的認知的側面から解明することを目的としている.今年度は,デジタル化された個人の体験情報をどのように構造化するかという点に焦点をあてて研究を行った.個人の体験を記録することは,すなわち大量のデータが刻一刻と蓄積されることを意味する.そのデータをそのままの形で再生した場合,記録した時間と同じ時間の再生時間を要し,体験の情報の活用が望めないのが現状である.我々は,そのような大量のデータについて,それをどのように取り扱うことで,有効な再生が可能になるのかを検討する必要がある.そこで今年度は,シンプルなセンサーデバイスを長時間装着して大量のデータを記録し,そのデータを元に体験の構造化の手法についての検討や,シチュエーションを限定した,多種類のセンサーを組み合わせた装着型デバイスによる体験の記録とその構造化の検討を行った.具体的には,小型のGPSデバイスとPDAを組み合わせた位置情報の記録デバイスを用い,24時間の個人の移動履歴のログを取得し,データの特性の検討を行い,また,会議の議事のデジタル化,屋外の特定の体験行動を記録し,その発話,位置の情報から体験の構造抽出を試みた.長期間の体験情報のログから個人の体験の特性,日常と非日常の差がある程度抽出できることがわかった.また,シチュエーションを限定した,体験の記録とその構造化については,個人の体験から状況の再生が可能であることが検証できた.今後は,こうした情報を元に構造化のアルゴリズムを検討し,体験のモデル形成を試みる.
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