研究概要 |
本研究は,平成13年度から推進している同課題名の研究プロジェクトを継続するものである.平成16年度は,Gridなどの大規模並列計算環境において,広帯域放送通信をデータ管理に利用することを想定し,クライアントが相関性のあるデータアイテムを効果的にキャッシングする方式を考案した.考案方式では,相関性をもつ複数のデータ項目に対するアクセス要求が同時に発生する場合と,時間間隔をおいて連続的に発生する場合が組み合わさった環境において,効果的な放送データ項目のキャッシングを行う.これらの考案方式を,シミュレーション実験により,さまざまな角度から性能評価を行った.その結果,従来方式と比較して,応答時間を大幅に短縮することを確認した.Gridのように大規模な並列計算を行う環境では,処理単位となるプロセスの実行には複数のデータが利用され,その処理に大きな時間がかかることが多いため,考案方式の有効性は高いものと考える. さらに,複数のクライアントがP2Pネットワークを構築し,協調的に放送データ項目をキャッシングする方式について研究を行った.考案方式では,クライアントであるピアが中継する問合せ要求メッセージを監視することにより,周辺のデータアクセス状況やキャッシュ情報を推測し,システム全体で利得が向上するようにキャッシュの置き換えを行う.シミュレーション実験による性能評価の結果,考案方式は従来方式に比べて大幅に応答時間を短縮できることを確認した. 今後は,放送データに更新が発生する場合に適応するため,効率的なキャッシュの無効化および更新情報の伝播方法について検討する必要がある.さらに,考案方式を実際のGrid環境上に実現し,アプリケーションを動作させることで,有効性を検証する必要がある.
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