近年の計算機技術とネットワーク技術に発展に伴い、Gridのように大規模数のホスト計算機がネットワークを介して並列計算を行うための基盤技術の開発が盛んに行われている。本研究では、Gridなどの並列計算を行う分散システムにおいて、広帯域な放送通信を用いてデータ管理を行うことで、並列計算のスループットおよび応答時間を短縮することを目的としている。 本研究は平成13年度から推進している同課題名の研究プロジェクトを継続するものである。研究を推進した5年間の最終年度となる平成17年度は、研究のとりまとめとして、これまでの考案方式に対して多角的な考察および詳細なシミュレーション実験を行った。さらに、考案方式に対して、実環境を考慮したいくつかの拡張を行った。まず、放送される膨大な量のデータに対して、データ識別子を指定した単純なデータ要求ではなく、データベースの問合せなどのように高度な問合せを効率的に実行できる機構を考案した。さらに、昨年度に考案した、P2Pネットワークを構成するクライアントによる協調キャッシング方式に対して、データ更新が発生する環境に適応するため、P2Pネットワーク上で効率的に更新情報を伝播する手法を考案した。これらの拡張により、データ更新や高度な問合せが発生する現実的な環境において、放送通信を用いて効率的にデータ管理を行うことが可能となった。 今後は、考案手法をさらに発展させ、個人情報やセンシング情報などが溢れかえる情報爆発時代に適した、スケーラビリティおよび環境変化に対する頑強性の高いデータ管理方式の実現が必要となる。
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