研究概要 |
科学技術計算を行う研究分野では,グリッド環境を利用することにより,精度の高い結果をいち早く得ようと試みている.科学技術計算では,一連の処理の中で最終的に精度の高い結果を得るために,途中結果から計算パラメータを調整し直し,再度実行するといった試行錯を行うことが多い.そこで,本研究課題では科学術計算における試行錯誤をグリッド環境で効率的に行うための高スループットコンピューティングシステムについての研究開発を行った. 本研究課題では,タンパク質立体構造予測を対象アプリケーションとして扱い,タンパク質立体構造予測を行う研究者が短時間で精度の高い結果を得ることのできる環境の提供を目標とした.現在,タンパク質立体構造予測手法は確立されておらず,試行錯誤によってタンパク質立体構造予測を行うことが望まれている.立体構造予測を行うために使用するツールに対して入力パラメータの変更は頻繁に発生する.また,個々の予測手法において多くのシステムが提案されており,その組み合わせや実行順序を変更することが考えられる.このため,利用者と高スループットコンピューティングシステムとの間に対話的な操作を実現し,見通しのよいアプリケーションの実行順序を定義できる機能が必要であると考え,複数のツールの実行順序の定義や,それぞれのツールにおける入力パラメータの定義を容易に実現することのできるワークフロー支援機構を提案した. 本研究課題で開発したワークフロー支援機構では,実行中のジョブに対するワークフローを変更し,即座にその変更を反映することが可能となるよう,変更部分のみを再実行できるようにしている.これにより研究者が任意の時点でワークフローを変更することができ,最終的なタンパク質立体構造予測の結果も精度を高めることが実現された.
|