本年度は前年度までの研究成果を踏まえながら、モバイルエージェント技術を利用した複合ドキュメントフレームワークを設計・実装・評価を行った。特に今年度は文書データを構成するソフトウェァコンポーネントの転送、複製、同期などの基本分散処理もコンポーネントとして実現した。また、これらのコンポーネントを組み合わせることで多様なネットワーク処理が実現できることと、文書編集と同様の操作を通じてコンポーネントの組み合わせが実現できることを確かめた。この結果は、分散処理の複雑性を大幅に低減するだけでなく、エンドユーザによる分散処理の定義・改変を可能にすることを意味し、ネットワークの高度利用において重要な一歩となる。この他、コンポーネントがそのコーンテンツ及び表示・編集プログラムとともにコンピュータ間を移動できるようにするとともに、その移動手順を記述する言語を開発した。特に高階関数の評価機構を導入することにより、コンポーネントが他のコンポーネントがもつ配布・移動経路を置換できるようにした。これによりアプリケーションやネットワークに応じてコンポーネントの移動経路を変えられるようになった。この結果は文書処理だけでなく、アクティブネットワークを実現する上でも重要な成果となる。また、CSCWなどの発展応用を前提にコンポーネントの複数ユーザの共有・配布機構を提案した。ここではEJBなどの既存の分散オブジェクトの親和性も考慮したことから、単なる共有機構にとどまらずトランザクション処理を含む高度なデータ共有を可能にする。なお、本研究の成果の一部はオープンソースソフトウェアとして配布を行うとともに、本研究に関わる研究成果を多数の論文誌及び国際会議において発表した。
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