研究概要 |
本研究では,重症心身障害児(重症児)施設と居宅をデジタル通信回線で接続して医療・福祉を支援するITシステムを開発し,またその実証運用を行い,これを手がかりとして実用化のための機器システムおよび社会モデルを提言することを目的とした。本年度は,昨年度に引き続き,4台の居宅端末機器を移設して延7ヶ所の重症児居宅での実証運用を継続して,実証評価や課題把握の信頼性を高めた。また,昨年度実施した実用型IT支援システムのための課題分析を手がかりに,重症児の在宅支援に特化できる機器システムの試作を行った。すなわち,新システムでは,第1に呼吸機能を中心としたバイタル信号のモニタリング,第2に携帯電話網を利用した伝送のモバイル化を重点要件として取り上げた。なお,バイタル信号としては,(1)血中酸素飽和度,(2)脈拍数,(3)終末呼気炭酸ガス分圧,(4)呼吸数,(5)聴診音を選択した。また,伝送のモバイル化にはDoCoMo FOMAを利用することにしたが,FOMAが利用できない地域を考慮してISDNの併用も用意した。システムは,2つの伝送系(FOMA2台)を使用し,それぞれが(1)テレビ電話機能と(2)バイタル信号測定およびテレビカメラ制御機能を担う。テレビ電話にはFOMA1台分の伝送速度(64kbps)をもたせたが,滑らかな動画やワイドな画面を得るには十分でなかった。しかし,比較的静止画に近い場合は実用に耐えられるようであった。居宅側のテレビカメラには,ズームイン・アウト,パン・ティルト機能に加えて逆光補正機能を新規に導入し,これらをセンター側から制御できるようにした。センター側のテレビカメラはできるだけ小型のものを使用し,映像モニタ上に設置することにより,目線のずれが無いように考慮した。画像,音声信号,および,5つのバイタル信号と制御信号は多重データ伝送装置およびFOMA CARDを通して双方向にモバイル伝送された。この多重データ伝送装置はISDN (64kbps,128kbps)にも対応可能であり,FOMAが利用できない地域でもこのシステムを使用できるようにした。
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