研究概要 |
本研究では,重症心身障害児(重症児)施設と居宅をデジタル通信回線で接続して医療・福祉を支援するITシステムを開発し,またその実証運用を行い,これを手がかりとして実用化のための機器システムおよび社会モデルを提言することを目的とした。本年度は,重症児の在宅ケア支援に特化したITシステムの実験運用に着手した。このシステムは呼吸機能のモニタリングを強化し,さらに,在宅ケアのQOLの向上やユビキタス化はかるために通信回線に携帯電話網の導入を図った。その運用結果は,酸素および炭酸ガスのモニタリングのセンサの開発がさらに必要なことが明らかになった。伝送速度に関して,現状の携帯電話網の速度は十分といえず,将来の高速化を待たなければならないという結論に至った。 また,これまで3年間の実証運用の成果を分析し,IT支援システムの標準化をハード・ソフト両面から追究した。具体的には,電話診療やバイタル情報を含めた適切な運用プロトコルが明らかにできた。特に,健康状態が不安定で,時には生命の危機に陥る重症児では医療支援が切望され,一方,比較的健康状態が安定している重症児は生活支援の要望の高いことが示唆された。技術的には,前者はバイタル情報が不可欠となるが,後者は音声情報と画像情報(いわゆるテレビ電話機能)で対応できるようであった。しかし,市販のテレビ電話を援用すればよいということではなく,カメラのズームイン・アウトやパン・ティルトなど高度な機能が不可欠であった。さらに,機器システムの要件や仕様,運用マニュアルや経費的な課題についても検討を加えた。 本研究は過疎遠隔地を対象とした一つの情報社会モデルを扱ったが,その成果の拡張として「自律分散型情報社会モデル」なる概念を提示した。それは様々な地域の固有のニーズ対応したローカルモデルを構築するとともに,これらを相互にネットワーク化して有機的な連携を図るものである。さらに,その具体例をも示して今後の展望とした。
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