研究概要 |
平成16年度はまずIRF-3のリン酸化酵素であるTBK-1やIKK-iをIRF-3と大腸菌体内で共発現する系を作成した.この系においてIRF-3は菌体内でTBK-1によりリン酸化を受けた状態として生産され,この試料をSDS-PAGEで分析したところ複数のバンドが生じていた.このリン酸化体をさらにゲルろ過によって分析したところ,二量体成分と単量体成分とに分けることができた.さらにSDS-PAGEでこれらの成分を分析したところ,二量体形成に関与するリン酸化を受けているものと,二量体形成に関与しないリン酸化を受けているものとで泳動度が異なることがわかった.現在,二量体形成能を有するリン酸化IRF-3のみをSDS-PAGEのゲル中から抽出し,これをプロテアーゼにより限定分解した結果生じたペプチド断片の中から,リン酸化部位を含むペプチドだけを同定する作業を進めている.また昆虫細胞においてもTBK-1及びIKK-i発現を試みたが,それぞれの遺伝子を含むバキュロウィルスまで作成できたものの,これらによる感染細胞において活性のあるリン酸化酵素の発現は認められなかった.前述のとおり,すでに大腸菌を用いたリン酸化IRF-3の発現系が完成していることから,今後さらに昆虫細胞を用いた発現系を用いる必要性があるかどうか再考している.なお,大腸菌で発現した二量体形成能をもつリン酸化IRF-3のみをクロマトグラフィーを用いて大量精製する方法も確立し,結晶化の検討を行えるだけの純度と濃度を有する試料を調製することができた.
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