γ-ヘルペスウイルスに属すカポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KAHV)は感染時においてウイルスDNAの維持と宿主細胞のがん化に関与する潜伏感染関連核抗原(LANA)を発現する。LANAはそのC末端領域にセリン・スレオニンキナーゼGSK3β結合配列を有し、さらに、LANAのN末端領域にGSK3βのリン酸化予想配列(S/TxxxS/T)を7つ持つ。我々はLANAのGSK3βによるリン酸化部位と両者の結合部位の同定を行なった。解析の結果、LANA219番目SerがGSK3βのリン酸部位であることが明らかとなった。このGSK3βによるLANAのリン酸化はMAPK(p38)、CKIのプライミングリン酸化依存的に行なわれていた。さらに、LANA219番Serのリン酸化はLANA自身の分解に関与していた。また、Ser219リン酸化体LANAに特異的に結合する細胞性蛋白質が複数存在することも明らかにした。 正常細胞において、AxinはGSK3βとβ-カテニンを互いに繋ぎ止めるためにアダプター蛋白質として機能する。本研究において、LANA蛋白も、AxinのGSK3β結合配列(GSK-BD)をLANA自身のC末端に有していることを明らかにした。また、LANAのGSK-BD内に位置するLue1132をProに置換した点変異体LANAはGSK3βとの結合能を消失した。さらに、GSK3β分子内のLANA結合部位を明らかにするため、点変異体GSK3βを用いて解析したところ、GSK3β分子の96番目Arg(基質認識部位)と291番目Phe(Axin結合部位)の変異体GSK3βはLANAと結合できないことが明らかとなった。この96番目Argと291番目Phe変異体GSK3βはAxinとも結合できないことが既に報告されており、LANAとAxinはGSK3β分子の同じ領域に結合することが証明された。
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