研究概要 |
感染免疫で、最初に病原体に接触する樹状細胞の走化性に関与するシグナル伝達分子を解析し、CCL19やCCL21などのケモカインによって誘導される成熟型樹状細胞の走化性が、c-Junの活性化によることを初めて明らかにした。また、このc-Jun活性化は、MMK4によって媒介されることも解明した。しかし、c-Junは、CCL19による成熟型樹状細胞の細菌取り込みには関与していないことも判明した(論文投稿中)。一方、NK-T細胞は、メインストリームT細胞が認識するペプチド抗原ではなく、疎水性脂質抗原をCD1d拘束性に認識することが、これまでの研究で判明した。近年、動脈硬化症の病態が、血管壁における炎症によって進展すること、また歯周病菌などの感染により動脈硬化症が増悪することが広く認識されてきた。従って、脂質抗原に反応するNK-T細胞が、動脈硬化症病巣形成に何らかの役割を果たすことが、強く示唆された。今年度は、種々の実験システムを用い、NK-T細胞が動脈硬化症促進的に働くことを明らかにした(Blood 104,2051,2004の表紙を飾る)。すなわち、正常B6マウスとCD1dノックアウト(KO)マウスに動脈硬化食を与え、病巣面積が、メインなNK-T細胞を欠くCD1dKOマウスで有意に減少すること、低比重リポ蛋白レセプター(Ldlr)KOマウスをB6、またはCD1d KOマウス骨髄で再建した骨髄キメラを用いる実験で、実際NK-T細胞欠損が、動脈硬化病巣の縮小と、病巣に浸潤するマクロファージやIFN-γ産生T細胞数の減少につながることを証明した。さらに、動脈硬化病巣に実際NK-T細胞が浸潤すること、これらNK-T細胞が酸化LDLに反応して、IFN-γを産生することを証明した。今年度はさらに、NK-T細胞がオステオポンチンを産生し、Con A誘導性肝炎発症を始動することを世界で初めて明らかにした(Immunity 21,539,2004)。
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