研究概要 |
腸上皮細胞における微生物認識機構と内因性抗菌ペプチドによる殺菌機能の分子基盤を明らかにするために、インフォームド・コンセントの下に、ヒト小腸粘膜を得て、陰窩に富む分画を得た後、単一細胞分画から単離腸上皮細胞を得た。フローサイトメトリー法と作製した抗αデフェンシン抗体等を用いて、Paneth細胞群の採取を試みた。 回収したPaneth細胞におけるHD5,HD6,NOD2,Toll様受容体およびCD14,MD2などの遺伝子発現をわれわれの確立したRT-PCR法で解析した。それらの結果、ヒトのPaneth細胞にHD5,HD6,Toll様受容体,CD14,MyD88をはじめとする自然免疫に関連する分子mRNAsの発現を検出した。抗αデフェンシン抗体を用いた免疫組織・細胞染色法等により一部のToll様受容体のPaneth細胞における局在を確認した。 また、単離したヒトの小腸陰窩と,Salmonella typhimurium, Escherichia coliおよびLactobacillus等をex vivo共培養後に、上清中の殺菌活性を解析したところ、いずれの上清中にも殺菌活性が検出された。さらに、Western blot解析により、上清中にαデフェンシンを認めた。現在、引き続き逆相HPLC等を用いて、得られた上清中の生理活性因子を検索するとともに、Paneth細胞分泌物中の殺菌因子の同定を行っている。
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