研究概要 |
γ-ヘモリジンの血球崩壊過程の中でもLukFの赤血球膜への初発の結合が血球認識のみならず、その後のHlg2の結合、膜孔形成を規定する重要なステップと考え、以下の実験を行った。我々が決定したLukFの立体構造を基に、LukFの底面に露出するアミノ酸残基を推定膜結合領域、PC結合領域の二つのグループに分類し、アラニンスキャンを行って各アミノ酸残基の赤血球崩壊活性及び膜への結合能への影響を検討した結果、Tyr72、Tyr203、Trp257、Fhe260、Tyr261が赤血球膜上の未同定レセプターへの結合に重要であり、本領域はLukF成分の赤血球膜への初発の結合に関与することを示唆した。一方、PC結合領域については、Trp177、Glu192、Arg198は赤血球膜への初発の結合には関与しないが、赤血球崩壊活性に重要であると考えられた。Trp177、Arg198両残基をThrに置換した変異体(W177T/R198T)を構築し、さらに本変異体にS45Cの置換を導入してRhodamineで標識し、IC5で標識したHlg2と共に赤血球に作用させ、FRET解析によりγ-ヘモリジンのヘテロ膜孔形成過程に対するのPC結合部位の役割の解析を行った。その結果、LukFのPC結合領域およびその赤血球膜上のPC(コリン残基)への結合は、膜孔形成過程においてヘテロ7量体の形成並びにステム伸長による機能的膜孔の形成に必須であることが示唆された。以上より、(1)LukFにおける赤血球膜表層と相互作用するアミノ酸残基を特定し、(2)PC結合領域の膜孔形成における役割を明らかにした。一方、(3)黄色ブドウ球菌におけるAgr, SarA, SigB欠損した変異株を取得し、SarAでは培地へのグルコース添加に対しγ-ヘモリジンの調節にLukF成分は負に、Hlg2成分は正に調節する事を見出した。
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