黄色ブドウ球菌が大量に分泌し、感染に重要な役割を果たす2成分性毒素ロイコシジン(Luk:LukFとLukSから成る)並びにγヘモリジン(Hlg:LukFとHlg2から成る)は標的細胞膜上にヘテロ7量体の中間体を経て膜孔を形成し、さらに膜孔は集合して『超チャネル』を形成する。本研究でわれわれは毒素の各成分の標的細胞膜への結合のか如する因子を探索するとともに、1分子測定技術を駆使して毒素分子が膜に突き刺さるタイミングをナノメートルオーダーでリアルタイムで解析した。また、上記毒素遺伝子の発現調節遺伝子の同定を行った。その結果、(1)LukFの赤血球膜への結合に関与するアミノ酸残基を同定し、コリン残基結合部位変異体の詳細な解析を行って、stem伸長のタイミング及び膜上の因子との結合に必須なアミノ酸残基を同定した。(2)疎水的な環境におかれると蛍光を放つBadanをLukF成分のprestemに導入し、一分子技術を用いてstemの細胞膜中への貫入の可視化に成功した。Stemの貫入に伴う蛍光の増加は第2の成分(Hlg2)を作用させた後にのみ観察され、一つの膜孔を開口するには少なくとも3分子のLukF分子が必要であることを明らかにした。(3)Luk及びHlgが膜孔を形成する過程で、標的細胞膜上の脂質ラフトが重要な役割を果たしていることを明らかにした。Two-hybrid法により、さらにLukSと相互作用する標的細胞上因子の候補としてMD-2が得られた。(4)Hlg/Lukの産生はsae系により、転写レベルで正に調節されていることを明らかにした。
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