研究課題
サルモネラ属細菌の病原性発現の主要な病原戦略の一つは、マクロファージ等の食菌作用からのエスケープと食細胞内増殖機構である。我々はこれまでに、サルモネラClpXPプロテアーゼ破壊株がマウス体内で長期間持続感染することを明らかにしており、持続感染性を維持するためには細胞内増殖が制御されていると考えた.この考えの基、昨年度の研究でマクロファージ環境下におけるClpXP破壊株の性状を検討した結果、ClpXP破壊株では外膜蛋白質PagCが過剰産生されることを見出した。このPagC過剰産生がClpXP破壊株の持続感染弱毒化の一因である可能性を考え、今年度はClpXP破壊株にPagC欠損を導入し、種々の病原性状を検討した。その結果、ClpXP破壊株はマクロファージ内増殖能が野生株よりも低下しているが、ClpXP・PagC二重欠損株では野生株レベルにまで回復した。また、マウスでのLD_<50>値は、野生株(<50)、ClpXP破壊株(4.9x10^4)、ClpXP・PagC欠損株(3.1x10^3)、PagC欠損株(<50)であった。以上の結果より、PagC過剰産生がClpXP破壊株の弱毒化の一因であること、さらにPagCはマクロファージ内増殖を制御して病原性を抑制するattenuating virulence factorであると考えられた。昨年度の結果から、PagCはOMVとして細胞外に放出されることを見出している。ClpXP破壊株およびPagC過剰産生株でOMVが増加することから、サルモネラのOMVの主要な構成成分はPagCであり、OMVを介して宿主細胞に輸送されると考えた。そこで、サルモネラを感染させたマクロファージを分画し、PagCの局在を調べたところ、細胞質内にPagCが検出された。以上の結果より、OMVによりマクロファージ細胞質に輸送されたPagCは、宿主細胞の高次機能に作用することにより細胞内増殖性を制御すると考えられる。
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