研究概要 |
本年度において,我々は,TLR9ファミリーであるTLR7およびTLR9下流でIFN遺伝子誘導につながる新しい経路を見出した.TLR7およびTLR9下流でのIFN産生誘導機構に関してはMyD88依存性であること以外は明らかにされていなかった.まず,我々は,このTLR7およびTLR9下流でのIFN遺伝子誘導において,従来ウイルス感染によるIFN遺伝子誘導に必須であることが知られているIRF-3およびIRF-7転写因子の関連性について検討を行った.その結果,FRET(fluorescence resonance energy transfer)解析により,細胞質においてIRF-7がMyD88と会合することを見出した.一方IRF-3はMyD88とは会合しないことが示された.また,luciferase reporter assayやCpG-A ODN(oligodeoxynucleotides)刺激による核移行の解析の結果,MyD88依存性にIRF-7が活性化され,核移行することも明らかとなった.様々なMyD88の変異体を用いた実験により,このIRF-7の活性化にはMyD88のdeath domain(DD)が必須であった.さらにIRF-7はTRAF6がIRF-7と会合し,その活性化に関与することも見出した.従来,IRAK4はMyD88のDDと会合し,下流のNF-kB活性化につながる必須の分子であることが知られていたが,今回MyD88欠損マウス由来のPDCsと同様にIRAK4欠損マウス由来のpDCsにおいてCpG-A ODNおよび一本鎖RNA刺激によるIFN-α産生誘導が全く消失することもわかり,TLR9-MyD88下流におけるIRF-7の活性化にIRAK4が関与していることも示唆された.一方,IRF-5転写因子が様々なTLRs下流においてMyD88依存的に活性化される新しい調節因子であることも見出した.活性化されたIRF-5はIFN遺伝子誘導ではなく,炎症性サイトカインであるTNF-αやIL-6,IL-12の遺伝子発現誘導に関わっていることを明らかにした.
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