高輝度有機系蛍光色素によるポリオウイルス(PV)の直接標識反応系を確立した。標識したことによるPVの力価低下がなく、培養細胞内における標識PVの挙動は非標識PVと差がないことを確認した。さらに、生細胞における蛍光標識PVのリアルタイム観察に成功した。具体的には、ラット運動神経初代培養細胞軸索において、蛍光標識PVとgreen fluorescent protein(GFP)融合PV受容体を含有する小胞が逆行性輸送されており、この輸送系には逆行性モーター蛋白質である細胞質ダイニンが関与していることを証明した。 また、ビオチンにより直接標識したPVの作製にも成功した。PVの抗原性が弱いため、抗PV抗体による免疫電顕では高解像度解析が困難だが、ビオチン標識PVを用いることにより免疫電顕観察が高解像度で行えるようになる。現在ビオチン化PV免疫電顕観察系を確立中である。 抗原の高感度検出を行うために有効な増感法を開発した。この技術により、固定化サンプルの抗原検出感度を特異性を維持しつつ上げることが可能になると考えられる。 これまでin vivoにおいてPVがPV受容体非依存的に血液脳関門を通過することを既に証明してきたが、PVの血液脳関門通過機構をin vitro系において詳細に検討するため、血液脳関門のモデル系である血管内皮細胞培養系の確立に着手した。現在までに、PV受容体を発現していないマウス血管内皮細胞単層培養系において、蛍光標識PVが細胞内に小胞として取り込まれることを明らかにした。この結果は、PVがマウス血管内皮細胞にPV受容体非依存的に小胞として取り込まれることを示しており、血管内皮細胞をPVが小胞輸送により通過している可能性を示唆した。
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