研究概要 |
腹腔や胸腔内等に存在するB-1細胞は、自己増殖能を持ち、多価かつ比較的低親和性の自然抗体を産生する。初期感染防御機構の一翼を担うと考えられ、またIL-5の標的細胞であるB-1細胞の維持活性化機構、自然抗体・IgA抗体の産生制御機構を解析した。B-1細胞コンパートメントの恒常性維持機構、B-1細胞活性化機構とその感染防御に果たす役割、粘膜組織における自然抗体産生細胞の供給過程の解明を目指した。 IL-5Rα欠損B-1細胞を正常マウス及びリンパ球欠損マウスへ移入することにより、IL-5/IL-5R系がB-1細胞の生存と恒常性維持のための増殖を促進し、自然抗体の産生維持に重要であることを明らかにした。また、IL-5Rα欠損B-1細胞がLPS刺激に対して低反応性であること、CD40の発現が低く抗CD40抗体刺激に反応性が低いなど、IL-5/IL-5R系がB-1細胞の効率良い活性化に重要であることを示した。細胞内アダプター蛋白質APS欠損マウスでは腹腔内B-1細胞が増加しAPSがB-1細胞の維持シグナルに関与することを明らかにした。B-1細胞の活性化障害が、粘膜を介して侵入する病原性微生物の感染防御にどのように影響するかについて検討を加えた。IL-5Rα欠損マウス血清中の抗リン脂質抗体は有意に低値であったものの、サルモネラ菌を経口感染した際の生存率、パイエル板、脾臓、リンパ節各組織での菌増殖において野生型マウスとの差はみられなかった。インフルエンザウイルスの経鼻感染では、IL-5Rα欠損マウス肺胞洗浄液中のIgM,IgG3値は低値を示したが、インフルエンザウイルス特異的抗体量に差はなかった。致死率にも有意差は認めなかった。サルモネラ菌及びインフルエンザウイルス感染系においては、B-1細胞及びIL-5/IL-5R系の感染防御への貢献は少ないと思われた。
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