研究課題
エボラウイルスの強い病原性に関わる因子は解明されていない。本ウイルスに対して効果的な予防・治療法を開発するためには、病原性発現のメカニズムを個体、細胞および分子レベルに至るまで明らかにする事が必要である。エボラウイルスのマトリックス蛋白質であるVP40分子上にはL-domain(PPxY motif)と呼ばれるアミノ酸配列が存在し、この領域がウイルスの出芽に関与する事が示唆されている。そこで、L-domainを欠失させた変異VP40を持つウイルスの作出を試みた結果、いずれのアミノ酸に変異を導入したウイルスも培養細胞(Vero E6)で充分に増殖可能であった事から、L-domainは培養細胞における増殖には必須ではない事が判明した。しかし、変異ウイルスの増殖速度はwild-typeのウイルスに比べて僅かに低かった。エボラウイルスZaire株の表面糖蛋白質(GP)に対する抗体の中には、感染を増強するものがある。しかし病原性の弱いReston株のGPに対しては、このような抗体は誘導されなかった事から、感染増強抗体の存在はエボラウイルスの病原性に関与していると考えられる。マクロファージや未成熟樹状細胞に発現し、galactoseおよびN-acetylgalactosamineに特異的に結合するC-typeレクチン(hMGL)を培養細胞に発現させると、エボラウイルスの感染性が上昇する。hMGLはエボラウイルスGP分子上のO-linkの糖鎖に直接結合し、ウイルスの感染効率を高めている事が判明した。(注)実際のエボラウイルスを用いた実験は、Heinz Feldmann博士の協力でカナダの国立研究施設Canadian Science Centre for Human and Animal Healthで行った。
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