研究課題
「研究目的」エイズ・バイオテロに代表される新興・再興感染症に対するワクチンの開発は、これらの感染源が主に粘膜面を介して侵入してくるという点からも重要であり、その開発は急務である。粘膜面に有効な抗原特異抗体を誘導するためには粘膜アジュバントの応用は必須である。しかしながらその有効性と安全性を兼ね備えた理想的な粘膜アジュバントの開発は未だ達成されておらず、本研究はヒトの応用に向けた安全性のより高い、有効な粘膜アジュバントの開発を目指すものである。「本年度の成果」本研究計画では我々が最初に開発したmCT(S61F,E112K)や、その改良型であるmCT-A/LT-Bキメラ分子を用いたHIVワクチン用粘膜アジュバントの応用化に向けた研究を展開してきた。昨年度に引き続き、人への応用を目指した霊長類(例:Rhesus macaque)を用いた研究では、mCTを経鼻アジュバントとして用いて得られた鼻洗浄液中のHIVgp120特異抗体にはHIVウィルスの中和活性があることが明らかになった。また、経鼻ワクチンの応用化に向けて問題となっている中枢神経系への毒性に関してもサルを用いた実験で、mCTの安全性が確認することができた。つまり、mCTは嗅神経上皮細胞に付着するが、その深層にある嗅球へは移行しないことが明らかになった。さらに、より安全で、効果的な経鼻粘膜ワクチンの開発に向けて我々は、mCTのA-2分子に改良を加えてdouble mCTの開発を進めた。これを粘膜アジュバントとして卵白アルブミン(OVA)抗原とともにマウスに経鼻免疫を行った。コントロールとして自然型毒素native CT(nCT)とmCT E112Kを用いた。新規開発したdmCT E112K/KDEVとdmCT E112K/KDGLはnCTとほぼ同程度の粘膜免疫応答増強効果を示した。「考察」ヒトに近い霊長類においてmCTを経鼻アジュバントとして用いた粘膜ワクチンの効果として、重要な課題である中和抗体が誘導できたことは大いに意義があるであろう。さらにこの中和抗体が、粘膜分泌液中に誘導されたことは、特筆するべき点であり、その安全性からもこのアジュバントのヒトへの応用が期待される。mCTのアジュバント効果誘導にはnCTの10倍量を投与しなくてはならない。そこで、今回新たに開発に着手したdmCTは、nCTと同量の投与でそのアジュバント効果が得られることわかり、さらにこのdmCTの研究を進めていくことによって、理想的な粘膜アジュバントのヒトへの応用への道が開かれていくと考える。
すべて 2005
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