IgM-BCRは抑制性共受容体CD22よる制御を受けるが、IgG-BCRではCD22による制御を受けないことがわかったが、IgE-BCRやIgA-BCRについては不明である。そこで、本年度はIgE-BCRおよびIgA-BCRシグナリングについて、抑制性共受容体CD22およびCD72による制御の有無を検討することにした。 IgEやIgAについてもNPハプテンに特異的な同一の可変領域を持つBCRを再構築したマウスBリンフォーマ細胞株BAL17あるいはWEHI-231を作製し、BCRの抑制性共受容体であるCD22あるいはCD72による制御がBCRアイソタイプによる特異性があるかを検討した。抗原NP-BSA刺激によるIgE-BCRあるいはIgA-BCRシグナルをIgM-BCRやIgG-BCRシグナルと比較した。IgE-BCRを持つ細胞ではIgG-BCRを持つ細胞と同様にカルシウムシグナルやERKの活性化がIgM-BCRを持つ細胞より亢進していたが、IgA-BCRを持つ細胞ではIgM-BCRを持つ細胞とほぼ同様であった。CD22およびCD72の活性化を調べたところ、IgE-BCRシグナルはIgG-BCRシグナルと同様にCD72のリン酸化を誘導し、SHP-1をリクルートするが、CD22はリン酸化されず、SHP-1のリクルートもなく、CD22が活性化されないことを見出した。IgA-BCRはCD22、CD72ともに活性化していた。 IgE-BCRについてCD22による制御の阻害についてIgM-BCRとのキメラ分子を作製して検討したところ、IgEの膜貫通領域と細胞内領域がCD22による制御の阻害の原因となっていることが判明した。これらのことより、IgE-BCRはIgG-BCRと同様にその膜貫通領域および細胞内領域に起因して、抑制性共受容体CD22を活性化させないのでBCRシグナリングが亢進していることが明らかになった。
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