研究概要 |
マラリア酵素と特異的阻害剤2FMNAとの間で、アデニン塩基2位のフッ素原子がCys59の近傍に存在することを実際に証明するため、マラリア酵素と2FNAMとの結晶化を検討した。その結果、阻害剤との結晶化に成功し、2位フッ素原子がCys59の近傍に存在することを明らかにした。 前年度に得たX線構造解析のデータを基盤に、基質アデノシンまたはアデノシルホモシステインの糖部近傍の構造解析を詳細に行った。その結果、基質糖部4'-位付近にホモシステイン残基が入りうる空間を見出した。そこで、その空間に位置する数種のアミノ酸残基(His54,Asn79,Asp134,Gly135,Phe346)に変異を導入し、その役割を検討した。Phe346に変異を導入したF346Aを作成し、その酵素活性を測定したところ約50分の1に活性が現弱した。その他の4種の変異酵素H54A、N79A、D134N、G135Fも作成し各々の酵素活性を測定したところ、酵素活性をほぼ消失していることが判った。従って、これらアミノ酸残基(His54,Asn79,Asp134,Gly135,Phe346)は、少なくとも酵素活性に重要な役割を果たしていることが判った。 炭素環ヌクレオシドの糖部に様々な置換基を導入した誘導体を合成し、それらのマラリア酵素に対する阻害活性を測定したところ、マラリア酵素に対して選択的な阻害活性を示す誘導体を発見した。 塩基部2位へのフッ素原子の導入によるマラリア酵素に対する選択的な阻害活性の誘起を解明することが出来た。更に、糖部への化学修飾がマラリア酵素に対する選択的阻害活性を増大するとの知見も得た。本研究で得られた成果は、熱帯熱マラリア原虫酵素の特異的阻害薬の開発に重要な指針を与えるものと考える。
|