研究課題
粘膜での免疫反応の誘導は感染症の多くが呼吸器、消化器、生殖器等の粘膜を介して成立することからワクチン開発の目的とするには有効である。粘膜免疫は一箇所の粘膜で誘導された免疫反応が、連続していない粘膜を含むすべての粘膜で誘導される。このことから粘膜へワクチンを運ぶ有効な方法が必要となる。一方、近年DNAワクチンを初回に(prime)、その後遺伝子組込みウイルスをboostするprime/boostワクチンが効果的であることが示されている。本研究では粘膜免疫誘導可能なprime/boostワクチンの開発を試みた。DNAワクチンのprimeには経口感染を示すE型肝炎ウイルスHEVのウイルス用中空粒子(VLP)を用い、その内部にヒトエイズウイルス(HIV)envDNAワクチンを封入し経口的に投与することで行った。このDNAワクチン封入VLPの経口投与でHIVenv特異的免疫反応が全身的ならびに粘膜面に液性免疫および細胞性免疫が誘導された。boostにはヒトの呼吸器に感染を示し、病原性のないパラインフルエンザ2型ウイルス(PIV2)をベクターとして用いた。HIVenv、HIVgag組み込みPIV2を作成し,このPIV2をマウス呼吸器内に投与したところ呼吸器粘膜上皮にHIV抗原の発現が認められた。投与されたマウスには病理組織学的には異常がなく体重変化等も認められなかった。この呼吸器内投与マウスにおいてリンパ節細胞でHIV特異的ELISPOT assayを行ったところ、全身の粘膜面で特異反応が認められ、特異的IgAも呼吸器洗浄液のみならず糞便中でも認められた。これらのことからPIV2ベクターは粘膜免疫誘導ワクチンにおいて有効なベクターであり、prime/boostワクチンにおいて利用可能であると考えられた。
すべて 2004
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Gene Ther. 11
ページ: 628-635
臨床とウイルス 32
ページ: 362-371