研究概要 |
我々がスカベンジャー受容体としてクローニングしたSR-PSOX/CXCL16は、スカベンジャー受容体活性と膜結合型ケモカイン活性を有する興味深い分子であり、活性化樹状細胞等に発現する。本研究では、SR-PSOXだけでなくケモカインファミリーに属する多種類のケモカインが細菌結合能を含むスカベンジャー受容体活性を有するか否かを明らかにすることを目的とした。そして、15種類のケモカインについて酸化LDLや細菌(E. coliおよびS. aureus)に直接結合できるかを解析した結果、15種類中12種類のケモカイン(グループAケモカインと命名:SR-PSOX/CXCL16,MIG/CXCL9,IP-10/CXCL10,SDF-1/CXCL12,RANTES/CCL5,eotaxin/CCL11,TARC/CCL17,ELC/CCL19,LARC/CCL20,SLC/CCL21,CTACK/CCL27およびMEK/CCL28)が強い結合活性を有するが、3種類のケモカイン(グループBケモカインと命名:fractalkine/CX3CL1,IL-8/CXCL8およびMCP-1/CCL2)は有意な結合能を示さないことを明らかとした。また、グループAケモカインの細胞遊送誘導活性をスカベンジャー受容体リガンドである酸化LDLやデキストラン硫酸が阻害することを示した。そして、グループAケモカインをSR-PSOXのムチンドメイン・膜貫通ドメインと融合させ、膜貫通型に変換した場合、その発現細胞が酸化LDLや細菌を貧食する活性を示すことを明らかとした。次に、SR-PSOX/CXCL16のケモカインドメインに存在する塩基性アミノ酸(6つ)を一つずつアラニンに置換した変異体を作成しケモカイン活性とスカベンジャー受容体活性を解析した結果、ケモカイン活性とスカベンジャー受容体活性に与える影響は基本的に同じであることが明らかとなり、ケモカイン受容体とスカベンジャー受容体リガンドに結合するドメインやモチーフが重なっていることを示した。ケモカインとスカベンジャー受容体という異なったファミリー間に予想外の関連性が存在することを示し、感染免疫系の全体像に新しい知見をもたらした。
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