研究概要 |
貪食細胞での微生物の殺菌は、NADPH oxidase(Nox)に由来する活性酸素種により行われる。活性酸素産生には、Noxの細胞膜成分(cytochrome b_<558>)と4つ細胞質成分(p47^<phox>,p67^<phox>,p40^<phox>,Rac)による活性化型機能的複合体形成が必要である。本研究は、この厳密に制御された活性酸素産生の分子機構を、貪食作用から始まる一連のカスケードとして捕らえ、機能蛋白質特にPKCおよびRacに焦点を当て、脂質との時・空間的相互作用の観点から、リアルタイムで可視化することにより解明することを目的とした。 【成果】(1)ファゴサイトーシスにおけるPKCとDGK分子種のライブイメージングと機能解析 GFP融合PKCを貪食細胞に発現させIgGビーズを貪食させると、7種のPKC分子種の中でβI PKC、εPKCのみがDGKではDGKβが食胞に集積した。βI PKCは食胞に集積したp47^<phox>をリン酸化し、貪食時の細胞外への活性酸素産生に必須であること、また、活性酸素産生は細胞内小胞膜上ではなく、食胞膜上で開始されることを明らかにした。 (2)ファゴサイトーシスにおけるRacの脂質結合とサブタイプ別機能 Rac分子種の貪食IgGビーズへの集積度の違いが異なることを見出した。この違いは、C末側の塩基性ドメインの違いに依存することを、このドメインのイメージング解析を行うことにより示した。生細胞内での動態観察を行い、それぞれのRacC末塩基性領域が異なる集積を示すことを示した。また、PLO(protein-lipid overlay)assayにより、この領域に脂質結合特異性があることを示した。さらに、Rac分子種のC末側の塩基性配列を各分子種間で入れ替えたキメラ蛋白を用いることにより、各分子種の活性酸素産生能と塩基性領域の活性酸素産生に果たす重要性を明らかにした。以上の結果より、βI PKCが活性酸素産生に重要であり、その活性酸素産生はphagosomal cup/phagosomeで起こることが明らかになった。同時にDGKβも活性酸素産生の制御に関与することを示唆した。また、Rac1はC末端の塩基性ドメインを介してphagosomeに集積し、その集積にはリン脂質への結合が関与することが示唆された。さらに、Rac2は同じ塩基性ドメインを介してエンドメンブランに集積する機構を持つことが示された。
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