研究課題
クロロキンをはじめとする既存抗マラリア薬に対する耐性熱帯熱マラリア原虫が出現し、新しい抗マラリア薬の開発はマラリアに関する最優先研究事項である。私は、薬用天然資源の中から薬剤耐性マラリアを克服できる新規マラリア治療薬を開発し、マラリア制圧に寄与することを研究目的として本研究を進める。下記に今年度の研究成果を期記する。(1)我々の独自の研究で得られた新規構造を有する常山アルカロイド誘導体、及び韓国産天然薬用資源よりベルベリン誘導体、およびニンジン粗成分に強い抗マラリア活性を見いだした。(2)抗マラリア活性を有するロダシアニン系色素化合物のアフィニティカラムを用い、マラリア原虫特異的なたんぱく質を単離し、2次元電気泳動後の断片をMALDI TOF/MSでアミノ酸分析を行った、その結果、マラリア原虫のアクチンとHeat Shock Protein 70であった。この二つのたんぱく質はマラリア原虫の増殖時に発現するたんぱく質のパターンとロダシアニン系色素を作用させて原虫のトロポゾイト期の形態異常の結果と一致したことからロダシアニン系色素の標的分子である可能性が高い。現在、こられたんぱく質以外にも5つの新しいたんぱく質スポットを解析中である。(3)常山リード化合物の選抜実験より毒性を示さない常山誘導体を見いだし、マラリア原虫に対する抗マラリア活性は1×10^<-6>M程度であった。現在、抗マラリア活性を上昇させるための誘導体の研究を行っている。(4)マラリア原虫の作用メカニズムの解析研究のため、2次元電気泳動でマラリア原虫たんぱく質を分離できる泳動条件を決定した。この分離条件を用いて天然抗マラリア薬用資源作用前後の培養熱帯熱マラリア原虫のたんぱく質パターンを2次元電気泳動で比較したところ、10個のたんぱく質スポットが得られた。現在これらスポットのアミノ酸を分析している。(5)選抜された抗マラリア候補化合物の分子標的を解析するための研究を行った。予備実験でマラリア原虫が栄養源を摂取する際に重要な役割をしている原虫の食胞オルガネラが膨張した結果を基に、候補化合物作用後の原虫内ヘモグロビン蓄積変化を精査したところ、ヘモグロビンの取り込み量は変化しないものの、原虫内グロビンが分解されてアミノ酸にして栄養源を獲得するステップを阻害していることがわかった。
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